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chemSHERPA実務

提出前チェックリスト20項目

差戻しの多くは、送信ボタンの手前で止まります。上から順に見ていくための20項目を、印刷して使える形にしました。

データを作り終えた直後は、自分の入力が正しく見えます。作った本人の目は、入力した内容ではなく「入力したつもりの内容」を読んでしまう。だから提出前のチェックは、記憶が新しいうちほど当てになりません。

そこで、順番の決まったリストを上からなぞる形にします。思い出しながら見るのではなく、項目に言われた場所だけを見る。20項目で10分前後です。差戻しが来た場合の復旧は、原因の特定だけで半日、仕入先への再照会が入れば1週間から2週間かかります。10分のほうが圧倒的に安い。

同じ内容を1枚の紙にした配布資料を配布資料に置いています。画面と紙を往復するより、紙を横に置いて画面だけを見るほうが速いためです。

このリストの使い方

3つだけ約束事があります。

ひとつ、上から順に見ること。気になる項目から見ると、気にならなかった項目が抜けます。差戻しは、気にしていなかったところから来ます。

ふたつ、1項目ごとに画面を該当箇所へ動かすこと。頭の中で「たぶん大丈夫」と処理した項目は、チェックしたことになりません。

みっつ、外れた項目があったら、直した後でリストの最初に戻ること。1か所直すと、連動して別の欄がずれることがあります。特に質量と構成比は連動します。

基本情報(1〜6)

依頼元が最初に見るのがこの区画です。ここが違うと、中身を見る前に返ってきます。

#項目見るところ外していると何が起きるか
1対象品番と図番の一致依頼メールに書かれた品番・型式・図番と、入力欄の文字列を1文字ずつ照合する似た品番のデータとして受け取られ、丸ごと作り直しになる。枝番違いが最も多い
2品名・型式の表記ゆれ全角と半角、ハイフンと長音、大文字と小文字。依頼元の表記に合わせる取引先の検索に引っかからず「未提出」として督促が来る
3発行者情報会社名の正式表記、事業所、部署、担当者名、電話とメール。旧社名や旧部署名が残っていないか問い合わせ先が不明として差し戻される。合併・組織変更の直後に頻発する
4発行日と依頼元の基準日作成日ではなく発行日の欄。依頼元が「○年○月時点」と指定していないか古い日付のまま出すと、最新の調査結果として扱われない
5AIかCIか自社が納めるものが成形品か化学品か。拡張子が .shai.shci様式違いは取込み自体ができない。塗料をAIで出す誤りが典型
6製品質量の単位と桁単位がmgかgかkgか。依頼元の指定があるか。桁が3つずれていないか単位取り違えは1,000倍の差になる。閾値判定が根本から狂う
基本情報のチェック項目

5で迷うなら、判定の手順をchemSHERPA-AI と CI、どちらを出すのか3問で判定に置いています。樹脂ペレットやはんだペーストのように境界にある品目は、自社の感覚ではなく用途で決めます。

6の単位は、社内の図面がmgで、依頼元の指定がgというような食い違いから生まれます。転記のときに一度だけ換算し、換算した事実をメモに残してください。後から見返したときに、換算済みかどうかが分からなくなります。

成分情報(7〜12)

ここは数字の整合が全てです。目視では気づきにくく、取込み時にエラーで弾かれます。

#項目見るところ外していると何が起きるか
7構成の合計が100%になるか各階層で構成比の合計を電卓で足す。99.8%や100.3%になっていないか取込みエラー。丸め誤差を残したまま出す例が多い
8階層の質量合計と上位質量下位部品の質量の和が、上位の質量と一致しているか合わないと「構成が不完全」として返される
9均質材料の区切りめっき、塗装、接着層、印刷インキを別の均質材料として立てているか分母が大きくなり、閾値超えを見逃す。最も影響が大きい誤り
10CAS RNの記載と表記チェックディジットまで含めて正しいか。ハイフンの位置は合っているか物質が特定できず、遵法判断側で紐づかない
11意図的含有と不純物の区別意図して入れたものか、原料由来で混入したものか。区分欄の選択不純物を意図的含有として申告すると、取引先側で不要な調査が走る
12NDと検出限界の扱い分析報告書のNDを「0」と書いていないか。検出限界値を併記しているか「0」と断定した記録が残り、後日の再検証で覆る
成分情報のチェック項目

9は、この20項目で最も差が出るところです。ねじ全体を1つの均質材料として扱うと、めっき層に含まれる六価クロムの含有率が桁で薄まります。区切り方は均質材料の単位をどこで区切るか0.1%の分母は何か。均質材料の切り方に、品目別の例で置いています。

12について補足します。分析報告書のNDは「含まれていない」ではなく「その分析方法では見えなかった」という意味です。書き方は検出限界以下なら「0」と書いていいのかにまとめました。

遵法判断情報(13〜16)

成分情報が正しくても、ここが空だと提出は完了しません。依頼元が遵法判断情報まで求めているかどうかは、初日に確認しておく項目です。

#項目見るところ外していると何が起きるか
13管理対象物質リストのバージョンツールが参照しているリストの版。2026年9月時点の最新はVer.2.13.00(CMPコンソーシアム、2026年4月公開)版が古いと、取引先側の版と突き合わない。取込みエラーまたは再作成
14遵法判断情報の入力有無依頼元が要否をどう指定したか。要の場合、全ての法規制欄が埋まっているか成分情報だけ提出して、追加依頼で1往復増える
15適用除外コードと根拠選んだ除外番号が、その用途に本当に対応しているか。根拠資料が手元にあるか根拠を示せないと差し戻される。RoHSの適用除外は期限付きで、2027年に集中している
16用途限定物質の読み違いリストの記号を確認する。用途を限って対象になる物質と、含有そのものが対象になる物質は扱いが違う用途外だから非該当と判断して、実は該当だった、という逆転が起きる
遵法判断情報のチェック項目

13のバージョンは動きます。Ver.2.13.00の改訂内容はLR05 POPs規則、LR06 REACH SVHC(第34次・第35次)、LR07 Annex XVII、LR08 医療機器規則、IC01 GADSL、IC02 IEC 62474の6項目です(CMPコンソーシアム告知)。リストの読み方は管理対象物質リストはどこを見ればいいのかに置いています。

15のRoHS適用除外については、2025年に公布された委任指令3件で、鋼・アルミ・銅合金中の鉛が2027年6月30日、高融点はんだ中の鉛とガラス/セラミック部品中の鉛が2027年末に期限を迎えます。いま根拠として使っている除外番号が、提出先の製品の出荷時期に対して有効かどうかを見てください。詳細はRoHS適用除外項目の期限が2027年に集中しているにあります。

16の記号の意味はSVHC欄の「A」「C」は何を意味するのかで扱っています。

遵法判断の責任は自社に残る

遵法判断情報は、川上のメーカーが代わりに決めてくれるものではありません。成分情報を受け取った側が、自社製品としての判断を出します。ここを誤解したまま進むと、承認者が決まらないまま提出日を迎えます。考え方は遵法判断は誰がするのか、という最大の誤解に書きました。

ファイルと運用(17〜20)

中身が正しくても、ここで止まることがあります。事務的に見えて、実は再提出の理由として少なくない区画です。

#項目見るところ外していると何が起きるか
17依頼元指定の様式との一致chemSHERPAのほかに独自Excelや不使用証明書の同封を求められていないか片方だけ出して「不足」として返される。依頼メールの本文末尾に小さく書かれていることが多い
18ファイル名規則依頼元が指定した命名(品番+日付+版数など)に合っているか。全角や記号が混ざっていないか自動取込みのシステムが受け付けない。手戻りは小さいが件数が多いと効く
19版数前回提出との違いが分かるか。改訂理由を記録しているかどちらが最新か分からなくなり、取引先と自社で別の版を正としてしまう
20宛先と提出経路メールなのか、取引先のポータルなのか、専用システムなのか。宛先アドレスと担当者送ったつもりで届いていない。ポータル指定をメールで送る誤りが典型
ファイルと運用のチェック項目

19の版数は、社内の管理と取引先への表示を一致させてください。社内で「rev.3」としているものを、提出ファイル名では「v2」としている、という食い違いが起きます。台帳の作り方は無料でできる範囲の管理台帳の作り方に置きました。

20の提出経路は、取引先ごとに違います。同じ会社でも事業部ごとに違うことがある。1度確認したら、台帳の取引先欄に経路を書いておくと2回目から迷いません。

2回目以降は5分になる

初回は20項目を全部見ます。2回目からは、自社で外しやすい項目が分かってきます。自社の製品構成に固有の弱点は、だいたい3つか4つに収束します。めっき品が多い会社は9で外し、商社機能のある会社は3と17で外し、多品種少量の会社は1と18で外す、というように偏ります。

外した項目に印を付けて、3回分ためてから見返してください。自社版の短縮リストが作れます。そのときも、短縮リストだけを使うのは年に1回までにして、残りは20項目に戻す運用が安全です。リストは減らすほど、減らした項目から差戻しが来ます。

チェックを本人以外がやれるか

理想は別の人が見ることです。ただ、兼任担当が1人という会社では現実的ではありません。

1人でやる場合の代わりになるのが、時間を空けることです。作成した当日ではなく、翌朝に見る。それも無理なら、いったん別の作業を30分挟んでから戻る。作成中の思い込みが薄れるだけで、気づく率が変わります。

もうひとつの手は、画面ではなく印刷して見ることです。紙にすると、桁のずれや単位の違いが視覚的に浮きます。20項目のうち、6、7、8のような数字の項目は紙のほうが速い。

送った後にやること

提出したファイル、仕入先からの回答、判断の根拠、チェックリストの実施記録を1セットで保存します。保存先は担当者のPCではなく共有領域にしてください。

このセットがあると、次にSVHCが追加されたときの影響調査が一気に短くなります。候補リストは2026年2月4日の第35次で253エントリーになり、2026年9月時点で第36次は未公表です(ECHA)。追加が来てから資料を探し始めると、それだけで数日かかる。手順はSVHCが追加された時の影響調査を1日で終える手順に置いています。

それでも差し戻されることはあります。返ってきたときの型と直し方は差戻し理由TOP10と、その直し方にまとめました。

未確認

chemSHERPAの旧版ツールについて、明確な使用期限は公表されていません(2026年9月時点)。最新はV2R1.03.0(日本語版・中国語版2026年4月24日公開、英語版rev.1 2026年5月1日)で、旧版からの切換え要請が出ています。取引先が旧版を前提にしている場合の扱いは、個別に確認してください。

チェックリストは印刷して配ってよいですか

社内での利用は問題ありません。配布資料に1枚版のファイルを置いています。仕入先への配布も、内容を変えずに出典を残していただければ差し支えありません。取引先ごとの独自要件は載っていないので、自社の追加項目は余白に書き足す前提で作っています。

20項目を全部見る時間がありません。優先順位はありますか

差戻しの影響が大きい順でいえば、1(品番)、6(単位)、7(合計)、9(均質材料)、13(リスト版数)の5つです。この5つだけでも、作り直しに直結する誤りはかなり減ります。ただし残りの15項目は「1往復増える」種類の誤りなので、件数が多い会社ほど効いてきます。

取引先から独自のチェックシートも一緒に出せと言われました

両方出すことになります。多くの場合、独自シートはchemSHERPAの内容の抜粋か、それに自社基準を足したものです。先にchemSHERPAを完成させ、そこから独自シートへ転記する順番にしてください。逆順にすると、両者の数字が食い違ったときにどちらが正しいか分からなくなります。取引先ごとに基準が違う理由はグリーン調達基準とは何で、なぜ会社ごとに違うのかにあります。

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