ダウンロードして、解凍して、実行ファイルを叩いた。何も起きない。あるいは見慣れない文言が出て閉じる。ここで多くの人が手を止めます。
原因は無数にあるように見えて、実際には数種類の型に収まります。順番を決めて上から潰すのが最短です。当てずっぽうに再インストールを繰り返すのがいちばん時間を食います。
なお、ファイル自体が開けないだけで、ツールは起動している場合は.shai / .shci ファイルが開けない時の完全手順のほうが近道です。
切り分けの順序
上の行から順に確認します。下の行ほど、社外への依頼や手続きが必要になります。
| 順 | 確認すること | 判定の方法 | 該当したときの対処 |
|---|---|---|---|
| 1 | 解凍が完了しているか | 圧縮ファイルの中から直接実行していないか見る | 解凍してから実行する |
| 2 | 置き場所のパスが長すぎないか | Cドライブ直下の短いフォルダにコピーして起動 | 短いパスへ移す |
| 3 | フォルダ名・ユーザー名に全角がないか | パスを目で追う | 半角英数字のフォルダへ移す |
| 4 | 置き場所に書き込めるか | そのフォルダにテキストファイルを1つ作ってみる | 書ける場所へ移す |
| 5 | 実行環境が入っているか | 配布ページの動作環境欄と自分のPCを突き合わせる | 情報システム部門へ導入依頼 |
| 6 | ウイルス対策ソフトが止めていないか | 対策ソフトの検疫・ブロック履歴を見る | 例外登録を依頼 |
| 7 | Excelの版と設定 | Excelが起動するか、マクロ設定を見る | 設定変更または版の確認 |
| 8 | 旧版と新版が混在していないか | 過去に入れたフォルダが残っていないか探す | 旧版フォルダを退避してから起動 |
| 9 | 配布ファイルが壊れていないか | ダウンロードし直して比較 | 再取得する |
1から4はその場で試せます。5以降は他部門の協力がいることが多い。まず1から4を潰して、それでも動かないことを確認してから人に相談すると、話が早く進みます。
原因の類型と、それぞれの対処
実行環境の前提不足
データ作成支援ツールはWindows向けのアプリケーションで、動作に必要な実行環境が配布ページの動作環境欄に示されています。この前提が欠けていると、起動そのものが成立しません。
確認は、配布ページの記載と自分のPCの状態を突き合わせるだけです。必要な版数をここに書き写すと更新に追随できなくなるので書きません。配布ページを見てください。
不足していた場合、多くの会社では自分で入れられません。次節の依頼文を使って情報システム部門に頼みます。
Excelの版と設定
chemSHERPA周辺の作業では、帳票の入出力でExcelを使う場面があります。Excelが入っていない、あるいは起動しない状態だと、ツール本体は立ち上がっても入出力で止まります。
確認は二つ。Excel単体が正常に起動するか。セキュリティ設定でマクロや外部コンテンツを全面的に止めていないか。会社の標準設定で厳しく絞っている場合があります。
ツール本体の起動自体がExcelの有無に左右されるかどうかは、版によって差があり得るため未確認とします。まずExcelが正常に動く状態を作ってから切り分けたほうが混乱しません。
文字コードと文字種
ファイル名やフォルダ名の全角文字、機種依存文字、空白、記号が原因になることがあります。ユーザー名が日本語で、その配下のフォルダに置いている場合も同様です。
判定は一手です。Cドライブ直下に半角英数字の短い名前のフォルダを作り、そこに一式をコピーして起動します。これで動けば原因は文字種です。
取り込むデータ側のファイル名も同じ影響を受けます。品番に全角記号が入っているときは、まず半角に直したコピーで試してください。
パス長
Windowsにはパスの長さの上限があります。ダウンロードフォルダの奥、さらに日付付きのフォルダ、その中に解凍、という置き方をすると簡単に触れます。
対処は置き場所を浅くするだけです。効果が大きいわりに見落とされやすい項目です。
書込み権限
ツールは動作中に一時ファイルや設定を書きます。書けない場所に置くと、起動はしても途中で止まります。Program Files配下に手で展開した場合によく起きます。
確認は、その場所に手でテキストファイルを1つ作ってみることです。作れなければ書込み権限がありません。ユーザー領域か、書込みを許可された作業用ドライブへ移します。
ウイルス対策ソフトによるブロック
社内の対策ソフトが、実行ファイルを未知のものとして遮断することがあります。厄介なのは、ユーザーに何も表示せず黙って止める設定があることです。何も起きないという症状のとき、この可能性を必ず一度は疑ってください。
確認は、対策ソフトの検疫履歴やブロック履歴を見ることです。自分で見られない設定なら、情報システム部門に履歴の確認を依頼します。
旧版と新版の混在
過去にツールを入れていて、そのフォルダが残ったまま新版を入れると、どちらの実行ファイルを起動しているのか分からなくなります。設定ファイルが残っていて、新版が古い設定を読む場合もあります。
対処は、旧版のフォルダを削除せずに別の場所へ退避してから、新版だけがある状態で起動することです。削除ではなく退避にするのは、過去に作ったデータの所在が分からなくなるのを避けるためです。
2026年9月時点の最新は V2R1.03.0(日本語版・中国語版2026年4月24日、英語版rev.1 2026年5月1日、CMPコンソーシアム発表)です。旧版からの切換え要請が出ていますが、明確な使用期限は公表されていません(未確認)。
配布ファイルの破損
ダウンロードが途中で切れていると、解凍はできても実行時に止まります。回線が不安定な環境や、社内のプロキシを経由する環境で起きます。
対処は取得し直すことです。可能なら別のネットワークから取得して、ファイルサイズを見比べます。
情報システム部門への依頼文
「chemSHERPAが動きません、何とかしてください」では動いてくれません。何を許可してほしいかを具体的に書きます。
件名:業務ソフト(chemSHERPAデータ作成支援ツール)導入のお願い
取引先から製品含有化学物質情報の提出を求められており、業界共通ツールの導入が必要です。下記をご確認・ご対応いただけますでしょうか。
- ソフト名:chemSHERPAデータ作成支援ツール(CMPコンソーシアム提供・無償)
- 入手元:cmp-consortium.com(業界団体の公式サイト)
- お願いしたいこと ・配布ページの動作環境欄に記載の実行環境が当該PCに入っているかの確認と、不足時の導入 ・ツール一式を C:\ 直下の作業フォルダに展開し、そのフォルダへの書込みを許可 ・ウイルス対策ソフトで当該フォルダおよび実行ファイルの例外登録 ・現在ブロック履歴に該当がないかの確認
- 用途:取引先へ提出する化学物質情報データの作成・閲覧。外部への自動送信機能は使用しません
- 希望時期:◯月◯日まで(取引先への提出期限が◯月◯日のため)
期限を書くのが要点です。期限のない依頼は後回しになります。提出期限から逆算した日程の組み方は取引先からchemSHERPAを求められた初日にやることに置いています。
どうしても動かないときの回避策
期限が迫っているなら、原因追及と並行して逃げ道を確保します。
一つ目は、社内の別のPCを借りることです。制限の緩い設計部門の検証用PCなどで動く場合があります。1台動けば当面はしのげます。
二つ目は、受け取ったデータを読むだけなら、送り手に帳票の併送を依頼することです。内容の確認はこれで足ります。ただし自社がデータを作成する立場のときは代替になりません。
三つ目は、作成代行に出すことです。相場は1件あたり4,000〜5,000円程度から、標準納期は5営業日から2週間程度です(2026年9月時点、各社の公開価格)。導入の社内手続きが数週間かかる見込みなら、初回だけ外に出して、その間に環境を整えるのが現実的です。選び方はchemSHERPA作成代行はいくらで何をしてくれるかにまとめました。
件数が少ない会社が、この躓きをきっかけに管理システムの導入検討を始めることがあります。急がなくて構いません。判断の目安は月10件以下ならシステムは要らないに書きました。
未確認
表示される文言は環境と版によって変わるため、この記事では具体的なメッセージ文言を挙げていません。出た文言はそのまま控えて、情報システム部門や配布元への問い合わせに添えてください。文言を言い換えて伝えると、原因の特定が遅れます。
二度目を防ぐ
動いたら、その状態を記録しておきます。記録するのは4つだけで足ります。ツールの版、置き場所のパス、実行環境として入れたもの、ウイルス対策の例外登録の内容。
これを共有領域のテキスト1枚に残しておくと、次に版が上がったとき、担当が代わったとき、PCを入れ替えたときの復旧が数分で終わります。台帳と一緒に置いておくのがおすすめで、置き方は無料でできる範囲の管理台帳の作り方に書きました。
解凍したのに実行ファイルをダブルクリックしても何も起きません
まずウイルス対策ソフトのブロックを疑ってください。何も表示せず遮断する設定があります。次にパス長と書込み権限です。Cドライブ直下に半角英数字の短いフォルダを作り、そこへ一式をコピーして起動し直すと、この3つをまとめて切り分けられます。
情報システム部門に「業務に不要」と言われて導入できません
取引先からの提出依頼メールと、提出期限を添えて再度出してください。個人の希望ではなく取引条件であることが伝われば判断が変わることがあります。それでも通らない場合は、作成代行を使う前提で、外注費の予算を上長に相談するほうが早く片付きます。
自宅や個人PCに入れて作業してもいいですか
社内の規程次第です。データには取引先の品番や構成が含まれるため、持ち出しに該当する可能性があります。判断を自分で下さず、規程を確認するか上長に確認してください。急いでいても、ここで事故を起こすと提出どころではなくなります。