「chemSHERPAをお願いします」というメールが届いた。添付には様式らしきファイル。期限は2週間後。ここから何をするか。
最初にやるのはツールのダウンロードではありません。依頼の条件を確定させることです。ここを飛ばして作り始めると、作り終えてから対象品番が違ったと分かる、という事故が起きます。
初日に確定させる5項目
| # | 確認項目 | 書かれていない場合に起きること |
|---|---|---|
| 1 | 対象品番の一覧(型式・図番まで) | 似た品番のデータを作ってしまい、丸ごと作り直し |
| 2 | chemSHERPA-AI か CI か | 成形品用と化学品用を取り違え、差戻し |
| 3 | 遵法判断情報が必要かどうか | 成分情報だけ作って提出し、追加依頼が来る |
| 4 | 管理対象物質リストのバージョン指定 | 古い版で作成し、取引先の取込みでエラー |
| 5 | 提出期限と、遅れる場合の連絡先 | 期限当日に交渉相手が分からない |
この5つを1通のメールで聞きます。小分けに何度も聞くと、相手の心証が悪くなるうえ、往復で3日溶けます。
聞き方の例を挙げます。
ご依頼ありがとうございます。作成にあたり、下記5点をご教示ください。
- 対象品番(型式・図番)の一覧
- chemSHERPA-AI/CIのいずれか
- 遵法判断情報の要否
- ご指定の管理対象物質リストのバージョン
- ご提出期限と、調整が必要な場合のご連絡先
あわせて、弊社から二次サプライヤーへの調査が必要な品番が含まれる場合、回収に2〜4週間を要する見込みです。
最後の一文が期限交渉の布石です。初日に書いておくと、後から延長を頼むより通ります。
AIかCIかの見分け方
依頼に明記がない場合、自社が納めているものが成形品か化学品かで決まります。
- 成形品(形が機能を決めるもの。部品、筐体、ねじ、基板、ケーブルなど)→ chemSHERPA-AI、拡張子
.shai - 化学品(形が機能を決めないもの。塗料、インク、接着剤、樹脂ペレット、はんだ、めっき液など)→ chemSHERPA-CI、拡張子
.shci
迷うのは、樹脂ペレットのように「材料として売っているが相手は成形する」ケースです。判定の手順はchemSHERPA-AI と CI、どちらを出すのか3問で判定にまとめました。
自社で作るか、外に出すか
初日のうちに決めておくと動きが速くなります。判断材料は3つです。
1件だけ、単純な構成の部品であれば自社で作ったほうが速い。多階層で、しかも初回であれば、代行に出しつつ自社は仕入先への照会に集中したほうが期限に間に合います。費用の内訳はchemSHERPA作成代行はいくらで何をしてくれるかに書きました。
初日の作業手順
- 依頼メールを読み、上の5項目のうち書かれていないものを洗い出す
- 確認メールを送る(この時点で期限の見通しも伝える)
- 返信を待つあいだに、対象品番の構成表(部品表)を手元に出す
- 構成部品のうち、自社で成分が分かるものと、仕入先に聞かないと分からないものを分ける
- 仕入先に聞く必要があるものについて、調査依頼を送る
- データ作成支援ツールをダウンロードし、起動を確認する
5を初日に出すことが重要です。回答待ちが全体の律速になるので、1日でも早く投げます。返信が来ない場合の手当ては返ってこない調査依頼の督促テンプレート3段階を使ってください。
6でエラーが出ることがあります。よくある原因はツールが起動しない・エラーで怒られる時にまとめています。
2週間の依頼を、どう割り付けるか
期限が2週間の場合の目安です。多階層の構成でなければ、この配分で収まります。
| 日 | やること | 遅れたときの影響 |
|---|---|---|
| 1日目 | 条件確認メールの送付、部品表の出力、仕入先への調査依頼 | ここが遅れると全体が同じ日数だけ後ろへずれる |
| 2〜3日目 | ツールの導入と動作確認、自社完結分の入力 | 導入でつまずくと2日溶ける |
| 4日目 | 依頼元からの回答を反映(AI/CI、物質リスト版数の確定) | 版数が違うと入力済み分が無駄になる |
| 5〜7日目 | 1回目の督促、自社完結分の完成 | 督促を出さないと2週目が消える |
| 8〜9日目 | 仕入先回答の取込み、閾値判定 | 回答の様式が揃わないと転記に時間がかかる |
| 10日目 | 2回目の督促(期限を明示) | — |
| 11〜12日目 | 遵法判断情報の入力、提出前チェック | チェックを飛ばすと差戻しで1往復増える |
| 13日目 | 提出 | — |
| 14日目 | 予備日 | 差戻し対応に充てる |
予備日を置くのが要点です。差戻しは珍しいことではなく、初回はむしろ来る前提で組みます。差戻しの型は差戻し理由TOP10と、その直し方に並べています。
督促を5〜7日目と10日目の2回に分けているのは、1回で返ってくる割合が高くないためです。3段階目の文面が必要になる場合も含めて、あらかじめ用意しておくと当日に悩みません。
期限交渉の切り出し方
「間に合いません」だけでは通りません。次の3点をセットにします。
- 何が律速か(例:二次サプライヤー3社からの回答待ち)
- いつまでなら出せるか(日付を明示する)
- 途中で出せるものがあるか(例:自社完結の2品番は先に提出できる)
分割提出を提案すると、相手の受入検査の都合と噛み合うことがあります。全部まとめて遅れるより、心証がよい。
社内で先に押さえておく1点
依頼が来た時点で、社内の誰が最終的に「問題ない」と判断するのかを決めておきます。データを作るのは担当者でも、遵法判断の責任は会社が負います。ここが曖昧なまま提出まで進むと、後から「誰が承認したのか」で止まります。
決め方は簡単で、部門長なのか品質保証責任者なのかを一度だけ決め、以後はそれに従います。詳しくは遵法判断は誰がするのか、という最大の誤解に書きました。
初日にやらなくてよいこと
- 管理対象物質リスト約8,000物質の中身を読むこと。必要な物質だけ、後から引けば足ります
- 全社の品目を棚卸しすること。今回の依頼を通してから考えます
- システムの検討。件数が見えてから判断します
最初の1件は、全体の流れを掴むために通すものと割り切ります。2件目から速くなります。
提出後にやること
提出したファイル、仕入先からの回答、判断の根拠を1セットで保存します。保存場所は担当者のPCではなく共有領域にします。次にSVHCが追加されたとき、このセットがあるかどうかで作業時間が一桁変わります。手順はSVHCが追加された時の影響調査を1日で終える手順に書きました。
期限が1週間しかありません。どうすればよいですか
自社完結の品番と、仕入先への照会が必要な品番を分けて、前者だけ先に提出する提案を初日に出してください。あわせて、後者の回答見込み日を伝えます。何も言わずに期限を超えるのが最も心証を損ないます。なお、代行会社の標準納期は5営業日から2週間程度なので、外注しても1週間はぎりぎりです。
依頼元が指定した様式が、chemSHERPAではなく独自Excelでした
独自様式の場合も、必要な情報(対象品番、成分、閾値判定、遵法判断)は共通です。まずchemSHERPAで社内の一次データを作り、そこから独自様式へ転記する形にしておくと、別の取引先から依頼が来たときに使い回せます。毎回ゼロから作ると、様式の数だけ工数が増えます。
自社は商社で、製品を作っていません
製造元から情報をもらって転送する立場になります。この場合、製造元の回答をそのまま転送してよいか(自社名義に書き換える必要があるか)を依頼元に確認してください。あわせて、製造元がchemSHERPAに対応していない場合の代替(不使用証明書など)も、初日のうちに依頼元と握っておくと後が楽になります。