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はじめてのCiP管理

自社は何を管理すればいいのか(対象範囲の決め方)

「主要部品は押さえた」で止まると、後から必ず漏れが出ます。漏れる場所は毎回同じです。

対象範囲の決め方でつまずく会社は多くありません。つまずくのは、決めた範囲が狭すぎたと後から分かるときです。

漏れが見つかる場所は業種を問わずほぼ同じで、めっき、塗装、接着剤、ラベルの4つです。いずれも部品表に品目として立っていないことが多い。

部品表に載っていないものが漏れる

対象漏れる理由実際に問題になる物質の例
めっき表面処理は工程であり、部品表に品目がない六価クロム、カドミウム、鉛
塗装・塗料塗装工程として扱われ、材料の成分が追われない鉛、フタル酸エステル類
接着剤・シール材副資材扱いで購買データに残らないフタル酸エステル類、SVHC各種
ラベル・シール・印刷インキ「部品ではない」と判断される重金属、フタル酸エステル類
梱包材製品に含まれないと解釈される重金属(包装材規制の対象)
はんだ・ろう材工程材料として扱われる鉛(RoHS適用除外コードの対象)
潤滑剤・グリス製造工程の消耗品とみなされるPFAS関連物質
ケーブル被覆・チューブ完成品に組み込まれるが単体の図番がないフタル酸エステル類、フッ素樹脂(PFAS)
漏れやすい対象と、その理由

共通しているのは「購買の品目マスタに立っていない」ことです。部品表から機械的に対象を拾うと、この列が丸ごと抜けます。

対象範囲は3つの軸で決める

軸1:製品の物理的な範囲

どこまでを自社製品とみなすかです。判断の基準は「顧客に引き渡す状態」です。

  • 本体に組み付けて出荷するもの → 対象
  • 取扱説明書・保証書 → 通常は対象外(ただし取引先が求める場合がある)
  • 個装・外装の梱包材 → 包装材規制の対象になる。取引先の要求を確認する
  • 付属品(ケーブル、ACアダプタ、工具)→ 対象。別メーカー品でも自社製品の一部として扱われる

付属品の見落としが多い。とくに他社から仕入れてそのまま同梱しているACアダプタやケーブルは、自社の部品表に入っていないことがあります。

軸2:物質の範囲

どの物質まで見るかです。ここは自社で決めるものではなく、外から決まります。

  • 法規制:chemSHERPAの管理対象物質リスト LR01〜LR08 が基準になる
  • 業界要求:IC01(GADSL)、IC02(IEC 62474)
  • 取引先の自主基準:グリーン調達基準書に書かれた独自の禁止物質

3つ目が曲者で、取引先ごとに違います。詳しくはグリーン調達基準とは何で、なぜ会社ごとに違うのかに書きました。

軸3:時間の範囲

いつ時点の製品を対象にするかです。

  • 現在出荷中の品番
  • 出荷は終わっているが保守部品として供給している品番
  • 製造中止だが在庫がある品番

保守部品が抜けやすい。設計が古く、当時の成分情報が残っていないことが多いためです。ただし出荷が続いている以上、規制の対象です。

実務上の絞り込み方

全品番を一度に調べるのは現実的ではありません。優先順位をつけます。

  1. 直近1年で調査依頼が来た品番
  2. 売上上位の品番
  3. EU・米国・中国向けに出荷している品番
  4. 上の3つに含まれる品番に共通で使われている部品

4が効きます。共通部品を先に押さえると、複数品番の調査が一度に片づきます。部品表を横に見て、使用回数の多い部品から潰していきます。

業種別に、どこが盲点になるか

同じ「めっき・塗装・接着剤・ラベル」でも、業種によって現れ方が違います。自社に近いものから点検すると早い。

業種見落としやすい箇所背景
電子機器・基板はんだ、コネクタのめっき、基板の難燃剤、放熱グリス実装工程の材料が部品表に立たない
機械・装置ボルトの表面処理、塗装、シール材、油圧ホース標準部品として一括購入され成分が追われない
自動車部品接着剤、制振材、ハーネスの被覆、樹脂の添加剤IMDS対応と chemSHERPA 対応で担当が分かれている
medical・分析機器チューブ、Oリング、フッ素樹脂部品、滅菌処理フッ素樹脂は PFAS 規制の論点に直結する
住宅・建材塗料、接着剤、断熱材、防蟻処理施工時に現場で使う材料が管理外に置かれる
繊維・雑貨撥水加工、染料、プリント、金属パーツのめっき加工を外注しており成分情報が届かない
業種別の盲点

表の右列に共通するのは「工程として扱われているため、購買データに品目として残っていない」という構造です。対象範囲を決めるときは、部品表ではなく工程表を横に置いて確認すると漏れが減ります。

実際に漏れが発覚する経路

漏れは自社の点検で見つかるより、外から指摘されて見つかることのほうが多い。経路は3つです。

  1. 取引先の受入検査や書面審査で、構成の一部について情報がないと指摘される
  2. SVHCが追加され、該当しそうな用途を洗い直した時に、そもそも調べていない部位が出てくる
  3. 顧客からの苦情や、市場での不適合報告をきっかけに遡って調べる

1と2は業務の中で吸収できますが、3になると回収や取引停止に発展します。先に自社で見つけておく価値はここにあります。

一度決めた範囲の書き方

範囲は文章ではなく表で持ちます。文章で書くと解釈の幅が残り、担当が変わるたびに解釈が揺れます。

列は、対象区分、具体例、対象/対象外、判断日、判断者、根拠の6列で足ります。行はせいぜい20行から30行です。これを1枚、共有領域に置いておけば、新任者が最初に読むべき資料になります。

「対象外」と判断したら、理由を残す

範囲から外したものについて、外した理由を書いた記録を残します。監査で聞かれるのは、調べたものより調べなかったもののほうです。

残す内容は3つで足ります。

  • 対象外とした品目
  • 判断した日付
  • 判断の根拠(例:顧客へ引き渡さない工程消耗品のため)

この記録がないと、担当が変わった時点で同じ議論をやり直すことになります。

点検用の12問

対象範囲を決めたら、この12問に答えられるか確認します。答えられない項目が、そのまま次の作業になります。

  1. 出荷する製品に同梱している付属品(ケーブル、電源、工具、予備部品)は範囲に入っているか
  2. 表面処理(めっき、陽極酸化、化成処理)の成分を把握しているか
  3. 塗装・印刷に使う材料の成分を把握しているか
  4. 接着剤・シール材・パッキンを品目として管理しているか
  5. ラベル、銘板、シールの成分を把握しているか
  6. はんだ、ろう材、溶接材の成分と、適用除外コードの根拠を持っているか
  7. 潤滑剤・グリス・防錆油が製品に残るかどうかを判断したか
  8. 梱包材について、取引先の要求範囲を確認したか
  9. 保守部品として供給を続けている旧製品を範囲に入れたか
  10. 海外拠点で調達している部品の情報経路を決めたか
  11. 商社経由で買っている部品について、製造元まで辿れるか
  12. 範囲から外したものについて、外した理由の記録があるか

12問すべてに「はい」と答えられる会社はほとんどありません。答えられない項目のうち、出荷量の多い品番に関係するものから着手します。

範囲を広げるタイミング

一度決めた範囲は、次の3つの場合に見直します。

  • SVHCが追加されたとき(対象物質が増えるため)
  • 新しい仕向地が増えたとき(適用される法規制が変わるため)
  • 取引先のグリーン調達基準が改訂されたとき

このうち1つ目は年に数回発生します。手順を決めておかないと、そのたびに範囲の議論から始めることになります。SVHCが追加された時の影響調査を1日で終える手順を参照してください。

工程で使うだけの薬品(洗浄剤など)は対象ですか

製品に残らないのであれば、製品含有化学物質としては対象外です。ただし残留する可能性がある場合(洗浄剤の残渣、離型剤、防錆油など)は対象になります。「使っているが製品には残らない」と判断した場合は、その判断と根拠を記録に残してください。なお、労働安全衛生法や化管法など別の法令では管理対象になります。

取引先から指定された品番だけ調べればよいですか

当面はそれで回りますが、依頼のたびに一から調べ直すことになります。共通部品を先に押さえておくと、次の依頼で使い回せます。3回目の依頼あたりで、品番単位ではなく部品単位で情報を持つ形に切り替えるのが効率的です。

海外の自社工場で作っている製品はどう扱いますか

出荷元がどこであっても、自社ブランドで市場に出す以上は同じ管理対象です。ただし現地で調達している部品の情報は現地で集める必要があります。英語版・中国語版のデータ作成支援ツールが提供されているので、現地担当者にはそちらを使ってもらうと様式が揃います。

  • 対象範囲
  • 管理対象
  • 漏れ
  • 基礎
  • 部品表