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RoHSとREACHとSVHC、関係を1枚で理解する

3つは並列の制度ではありません。SVHCはREACHの一部で、RoHSは別系統です。ここを取り違えると書類が通りません。

取引先から「RoHS対応とREACH対応の証明をください」と言われて、1枚の証明書にまとめて出し、差し戻される。よくある入り口の失敗です。

原因は制度の階層を取り違えていることにあります。RoHSとREACHは別の法令です。そしてSVHCはREACHの中にある仕組みのひとつで、REACHと並ぶものではありません。

3軸で並べる

RoHS指令REACH規則SVHC候補リスト
位置づけEU指令 2011/65/EU(RoHS2)EU規則 1907/2006REACH規則の中の仕組み
地域EU(各国が国内法化)EU(規則なので直接適用)同左
対象電気電子機器化学物質全般と、成形品に含まれる物質成形品・混合物を含む
何を求めるか制限物質が閾値を超える製品を市場に出さない登録・評価・認可・制限情報伝達(第33条)と届出
閾値カドミウム0.01wt%、他9物質0.1wt%(均質材料単位)物質と条項ごとに異なる0.1重量%超(成形品)
違反したら製品を上市できない登録なければ流通不可、制限違反は市場撤去情報伝達義務の不履行
RoHS・REACH・SVHCを地域・対象・義務で並べる

読み方はこうです。RoHSは「この製品は売っていいか」を決める規制。REACHは化学物質そのものを網羅的に管理する枠組み。SVHCはREACHの中で「懸念が高い」と特定された物質の一覧で、載ると情報を伝える義務が生じます。

RoHSは電気電子機器の上市規制

現行はRoHS2、指令2011/65/EUです。2011年7月21日発効、2013年1月3日から本格施行されました。制限されているのは10物質です。

  • 鉛、水銀、カドミウム、六価クロム
  • PBB(ポリ臭化ビフェニル)、PBDE(ポリ臭化ジフェニルエーテル)
  • フタル酸エステル4種(DEHP、BBP、DBP、DIBP)

閾値はカドミウムが0.01重量%(100 ppm)、残り9物質が0.1重量%(1,000 ppm)です。重要なのは分母です。製品全体ではなく、均質材料という単位で見ます。機械的に分離できない最小単位、という意味です。ねじ1本のめっき層だけで判定することもあります。この分母の切り方は均質材料の単位をどこで区切るかで詳しく扱っています。

RoHSには適用除外の仕組みがあります。技術的に代替が難しい用途について、期限付きで制限を外すものです。2025年には除外項目の委任指令が3件公布されました。

指令内容除外項目新しい期限
(EU) 2025/2364鋼・アルミ・銅合金中の鉛6(a), 6(a)-I, 6(b), 6(b)-I, 6(b)-II, 6(c)2027年6月30日
(EU) 2025/1802高融点はんだ中の鉛7(a) と新設の7(a)-I〜VII2027年末
(EU) 2025/2363ガラス・セラミック部品中の鉛7(c)-I, 7(c)-II と新設の7(c)-V, 7(c)-VI2027年末
2025年公布のRoHS適用除外委任指令3件

3件とも2025年12月11日に発効し、加盟国の国内法化期限は2026年6月30日、適用は2026年7月1日からです。期限の更新を申請する場合は、新しい期限の18か月前までに出す必要があります。期限が2027年に集中している影響はRoHS適用除外項目の期限が2027年に集中しているに切り出しました。

出典が食い違っている点

(EU) 2025/1802 の公布日について、EUR-Lexのメタデータは官報掲載も発効も2025年12月11日としています。一方でJEITAの解説は11月21日公布としています。本稿はEUR-Lexの記載を採りました。社内資料に日付を書く場合は、どちらを典拠にしたかを併記しておくと後で揉めません。

REACHは化学物質の包括的な枠組み

REACHは Registration(登録)、Evaluation(評価)、Authorisation(認可)、Restriction(制限)の頭文字です。EU域内で化学物質を製造・輸入する事業者に、物質の情報を登録させるところから始まります。

日本の部品メーカーが直接ぶつかるのは、このうち制限(Annex XVII)と、後述するSVHCの情報伝達義務です。登録義務は原則としてEU域内の製造者・輸入者にかかるもので、日本から部品を輸出する側が直接負うことは多くありません。制度の全体像はREACH規則を実務目線でわかりやすくにまとめています。

REACH本体の改正は動いていません。2026年4月27日、欧州委員会のJessika Roswall環境担当委員が欧州議会ENVI委員会で、現段階でREACH改正の立法案は提出しないと表明しました。棚上げになったのは、登録有効期間10年制、ポリマーの登録義務化、低トン数物質の情報要件拡大、混合配分係数の導入などです。経緯はREACH改正が棚上げになった経緯にあります。

SVHCはREACHの中の候補リスト

SVHC(Substances of Very High Concern、高懸念物質)は、発がん性や生殖毒性、難分解性などの性質から特定された物質です。ECHAが候補リストに収載します。2026年9月時点で253エントリーです。

候補リストに載ると、第33条の情報伝達義務が発生します。候補リスト収載物質を0.1重量%を超えて含有する成形品をEU市場に供給する事業者は、受け取る側に安全な使用のための情報を伝えなければなりません。

直近の追加は2回です。

  • 第34次:2025年11月5日。DBDPE と n-Hexane
  • 第35次:2026年2月4日。Bisphenol AF及びその塩(2物質群)。この時点で253に

従来は6月と12月から1月にかけての定期更新でしたが、この2回はいずれもその枠から外れています。次回の見通しはSVHC第36次はいつ来るのかに書きました。2026年9月20日時点で第36次は公表されていません。

候補リストの一部は、さらに認可対象(Annex XIV)に進みます。2025年11月18日には第12回推奨が確定し、メラミン、バリウムジボロンテトラオキシド、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキシドなど4物質が挙がりました。

SCIPは第33条とセットで見る

SCIPは、候補リスト収載物質を0.1重量%超で含む成形品について、ECHAのデータベースへ届け出る仕組みです。2021年1月5日に義務が始まりました。第33条の情報伝達が「取引先に伝える」義務であるのに対し、SCIPは「当局のデータベースに登録する」義務です。対になっています。

ただしSCIPには廃止提案が出ています。2025年12月10日、欧州委員会がEnvironmental Omnibusを採択・公表し、SCIPデータベースの廃止を提案しました。理由として、リサイクル業者への情報提供に有効でないこと、企業の行政負担が過大であることが挙げられています。代替はDPP(デジタル製品パスポート)とされています。欧州議会と理事会の審議待ちで、廃止の時期は確定していません。詳しくはSCIPデータベースが廃止されるかもしれないに。

廃止提案が出ているからといって、今の義務がなくなったわけではありません。審議が終わるまでは現行どおりです。

「1枚で済ませる」が失敗する理由

冒頭の失敗に戻ります。RoHSとREACHを同じ書類で済ませようとすると、たいてい次のどれかで止まります。

やってしまうことなぜ通らないか
「RoHS10物質とSVHCは不含有」とだけ書くSVHCは253エントリーある。10物質と並べる粒度ではない
閾値を「製品全体の0.1%」と書くRoHSは均質材料単位。分母が違う
SVHCも「不含有」で押し切る第33条は不含有の証明ではなく、含有時の情報伝達を求める制度
適用除外を書かない除外を使っている鉛が「不含有」と矛盾する
版数・時点を書かない候補リストは更新される。いつ時点の判断か分からない
1枚にまとめて差し戻される典型パターン

実務上は、RoHSとREACH/SVHCは書類を分けるか、同じ書類の中でも節を分けて、それぞれの閾値と根拠と時点を別々に書きます。chemSHERPAを使っていれば、この切り分けは様式側が持っているので迷いません。証明書を手書きする場合の項目立ては不使用証明書と非含有証明書の違い、そして書き方に置きました。

どちらが先に効いてくるか

自社製品が電気電子機器またはその部品なら、まずRoHSです。上市できるかどうかが直接かかるからです。次にSVHCの第33条。含有していれば伝えなければなりません。REACH本体の登録は、EU域内に法人を持たない日本の部品メーカーが直接負う場面は限られます。

自動車部品なら順序が変わります。RoHSは電気電子機器の規制なので、車両そのものにはELV指令が対応します。自動車業界ではGADSLとIMDSが実務の中心になります。

RoHS指令とRoHS2は違うものですか

同じものを指すことが多い言い方です。2002年の指令2002/95/ECが最初のRoHSで、これを置き換えたのが2011年の指令2011/65/EU、通称RoHS2です。現在「RoHS」と言えば通常RoHS2を指します。制限物質にフタル酸エステル4種が加わって10物質になったのはRoHS2の改正によるものです。

SVHCが253あると言われても、全部調べられません

全部を分析するのは現実的ではありません。分析でSVHC全項目を測ると1検体19.5万円から24万円かかります。通常は仕入先からの成分情報で判断し、分析は根拠が取れない品目に絞ります。費用の実勢は分析費用の相場の記事に載せています。

日本国内だけで売る製品にもRoHSは効きますか

EUのRoHS指令そのものは効きません。ただし納入先がEUに出す製品に組み込む場合は、その製品の一部として求められます。また中国のGB 26572-2025が2027年8月1日に施行され、制限物質が6種から10種に増えます。国内取引だけの会社でも、取引先の輸出先まで確認しておく必要があります。

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