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費用と相場

分析費用の相場(RoHS・SVHC・PFAS/2026年実勢)

分析は最後の手段です。金額を知る目的は、出すためではなく、出さずに済ませる判断のためです。

「仕入先から回答が来ないので、分析に出すしかない」。この結論に至る前に、金額の桁を知っておく価値があります。RoHSの主要項目なら数万円ですが、SVHCの全項目になると1検体で20万円前後です。品番が10点あれば200万円になります。

ここでは、2026年9月時点で料金を公開しているラボの実額を並べます。価格を公開していないラボも多数あり、そちらの金額は確認できていないため書きません。

掲載料は受け取っていません

この記事に載せたラボから、掲載料・紹介料・アフィリエイト報酬はいっさい受け取っていません。料金を公開しているという一点だけを理由に掲載しています。並び順は項目の対応関係が見やすい順で、推奨の順ではありません。方針は編集方針に書いています。

RoHS・SVHC・フタル酸の公開料金

項目三晃技研工業(eco分析.com)JTC(rohs-eco.com)
RoHS簡易(蛍光X線によるスクリーニング等)9,000円記載なし
RoHS 4物質記載なし15,000円
RoHS 6物質18,500円20,000円
RoHS 10物質(フタル酸4種を含む)41,000円46,000円
フタル酸エステル 3項目24,000円記載なし
フタル酸エステル 6項目30,000円記載なし
SVHC 全項目195,000円(253物質と表記)240,000円(254物質と表記)
PFOS25,000円30,000円
PFOA25,000円30,000円
PFOSとPFOAの併合記載なし38,000円
ハロゲン(臭素・塩素等)記載なし18,000〜20,000円
標準納期8〜10営業日7〜9営業日(特急あり)
分析料金の公開実額(1検体あたり・2026年9月時点。三晃技研工業とJTCは税抜表記)

RoHS 10物質の価格差は約5,000円です。この程度の差なら、納期と、報告書の書式が取引先の求めに合うかどうかで選ぶほうが合理的です。JTCは自社サイトで「業界最安値」を掲げていますが、項目によっては三晃技研工業のほうが安く、全項目で最安ということではありません。

SVHC全項目の物質数が253と254で食い違っています。SVHC候補リストは2026年2月4日の第35次追加で253エントリーになりました(ECHA)。ただしエントリー数と物質数は一致しません。1つのエントリーが複数の物質を含む群指定の場合があるためです。各社の表記がどの時点のリストと数え方に基づくものかは確認できていません。見積時に、対象とする候補リストの更新日を必ず確認してください。候補リストの現況はSVHC候補リストの最新状況で追っています。

ミニマムチャージと、水質・食品の料金

ラボによっては、項目単価とは別に最低受注金額が設定されています。

事業者項目金額税表記納期
ディファレントミニマムチャージ(最低受注金額)8,000円各社記載に従う精密分析8営業日/めっき膜厚15営業日
食環境衛生研究所水質 PFOS・PFOA(2項目)28,600円税込と明記10〜15営業日
食環境衛生研究所水質 3項目30,800円同社表記10〜15営業日
食環境衛生研究所水質 4項目41,800円同社表記10〜15営業日
食環境衛生研究所農畜水産物 4項目60,500円同社表記10〜15営業日
食環境衛生研究所消火剤55,000円同社表記10〜15営業日
ミニマムチャージおよび水質・食品系の公開料金(2026年9月時点)

ミニマムチャージは見落としやすい項目です。安価な単項目を1検体だけ依頼すると、単価ではなく最低受注金額で請求されます。数検体をまとめて出すほうが、1検体あたりでは下がります。

税込と税抜が混ざっている

比較するときに最初に直面するのがこれです。三晃技研工業とJTCの公開料金は税抜表記、食環境衛生研究所のPFOS・PFOA 28,600円は税込と明記されています。同社の他項目も同じ表記に揃えて読めますが、税抜との混在があるため、見積書で必ず確認してください。

消費税10%で換算すると、税抜195,000円は税込214,500円、税抜240,000円は税込264,000円です。20万円台の買い物では、この差だけで数万円になります。社内の稟議に出す金額は、税込に揃えてから比較してください。

さらに、送料、検体の前処理費、報告書の英文化、特急料金が別建てになる場合があります。公開されている単価は、多くの場合これらを含みません。

相場としての結論

公開されている実額をまとめると、2026年9月時点の水準は次のようになります。

2.8〜3.0万円水質 PFOS・PFOA 2項目食環境衛生研究所の公開価格(税込)を基準
3.0〜4.2万円水質 3〜4項目同上
2.5〜3.8万円製品・樹脂中の PFOS/PFOA三晃技研工業25,000円、JTC30,000円・併合38,000円(税抜)
4.4〜6.0万円食品・農畜水産物 4項目食環境衛生研究所の公開価格
19.5〜24万円SVHC 全項目三晃技研工業195,000円、JTC240,000円(税抜、1検体)

RoHSの主要な範囲は、6物質で1.85万円から2.0万円、フタル酸4種を含む10物質で4.1万円から4.6万円です(いずれも税抜、1検体)。制限対象の内訳はRoHS指令の制限10物質と閾値にあります。

分析に出す前に考えること

金額を見て分かるとおり、全数分析は現実的ではありません。品番が50点あり、1品番から3検体を採れば150検体です。RoHS 10物質だけでも600万円を超えます。

実務の順序は次のとおりです。

まず情報伝達で埋めます。仕入先からchemSHERPAや成分表を受け取り、それを積み上げて判断する。これが本来の姿です。制度全体がこの前提で作られています。回答が返ってこないときの督促は返ってこない調査依頼の督促テンプレート3段階にあります。

次に、代替手段を試します。仕入先が成分の詳細を出せない理由が営業秘密である場合、不使用証明書や、物質を限定した非含有の回答なら出せることがあります。書式と注意点は不使用証明書と非含有証明書の違い、そして書き方にまとめました。

分析は最後です。出すのは、次のような場合に限られます。仕入先が廃業または連絡不能で、代替部品への切り替えも間に合わない。取引先が契約や監査の条件として分析報告書そのものを求めている。過去に不適合が見つかった品目で、出荷前の確認が必要になっている。あるいは、複数の情報が食い違い、どちらが正しいか書面では決着しない。

分析で分かるのは「その検体のその時点」だけ

分析報告書は、提出した検体1つについての結果です。同じ品番でも、ロットが変われば材料の調達先が変わっていることがあります。分析は、情報伝達の代わりにはなりません。継続的な担保には、仕入先からの変更通知の取り決めが必要です。報告書のNDをどう記載するかは検出限界以下なら「0」と書いていいのかに書きました。

検体の作り方で金額が変わる

見積が想定の何倍にもなる原因は、単価ではなく検体数です。

RoHS指令の閾値は均質材料単位で判定します。カドミウムが0.01重量%(100 ppm)、その他9物質が0.1重量%(1,000 ppm)です。均質材料とは、機械的に分離できない最小の単位を指します。したがって、厳密に判定しようとすると、1つの部品を材料ごとに切り分けて別々の検体にすることになります。

たとえば1個のコネクタを考えます。樹脂ハウジング、金属コンタクト、コンタクト表面のめっき、はんだ。この4つを分ければ検体は4つで、RoHS 10物質なら16万円から18万円台です。まとめて1検体にすれば4万円台ですが、その場合の結果は混合物としての濃度であり、均質材料単位での判定には使えません。

分け方検体数概算費用どこまで言えるか
製品まるごと1検体14.1〜4.6万円スクリーニング。閾値超過の疑いを拾う用途にとどまる
主要部位ごとに分ける3〜412.3〜18.4万円疑わしい部位を特定できる。個々の均質材料の判定には不足
均質材料単位で分ける8〜1532.8〜69.0万円閾値判定に使える。ただし1品番でこの金額になる
検体の分け方と費用・使える判定の関係(RoHS 10物質・税抜の公開単価で試算)

現実的な進め方は、蛍光X線などの簡易分析(三晃技研工業で9,000円)で全体をふるいにかけ、反応が出た部位だけを均質材料単位で精密分析に回す形です。どこで単位を切るかは均質材料の単位をどこで区切るか0.1%の分母は何か。均質材料の切り方を見てください。

なお、簡易分析は元素を見るものであり、フタル酸エステルのような有機化合物やSVHCの多くは対象外です。ふるいにかけられる範囲には限りがあります。

PFASの分析は範囲の切り方から

PFASは項目の切り方で金額が大きく動きます。公開されているのは、PFOSとPFOAという2物質を対象とした料金が中心です(三晃技研工業 各25,000円、JTC 各30,000円・併合38,000円、いずれも税抜)。水質であれば食環境衛生研究所の2項目28,600円(税込)があります。

一方、EUで審議中の制限提案は1万物質超を対象としています。提案国はオランダ・ドイツ・デンマーク・ノルウェー・スウェーデンの5カ国で、2026年3月26日にRACとSEACの意見が公表され、SEAC最終意見と欧州委員会への提出は2026年末が見込まれています(ECHA)。この範囲を分析で網羅する方法は、2026年9月時点で存在しません。

日本側では、PFHxS関連物質が化審法第一種特定化学物質に指定され、2026年6月17日に施行されました(2025年12月17日政令公布、対象117物質は2026年4月17日公布の省令で確定)。水道水質基準へのPFOS及びPFOAの追加は2026年4月1日施行で、合計50 ng/Lです。製品含有として何を調べるべきかは製品に含まれるPFASはどこまで調査対象になるのか(2026年版)に整理しました。

実務としては、撥水・撥油加工の繊維、フッ素樹脂のシールやOリング、めっき用表面処理剤、消火薬剤といった、当たりの付く部位に絞って分析を掛けることになります。全品目に対する網羅的なPFAS分析は、費用の面でも技術の面でも成立しません。

見積もりを取るときに伝える6項目

見積依頼が曖昧だと、金額も納期も曖昧なまま返ってきます。最初のメールに次の6つを書けば、1往復で見積が出ます。

ひとつめ、対象とする規制と項目。EU RoHSの10物質なのか、REACH候補リストの全項目なのか、特定の物質だけか。「RoHS一式」とだけ書くと、6物質と10物質のどちらかが分かりません。

ふたつめ、検体の内容と点数。材質、形状、おおよその質量、分離済みか未分離か。均質材料単位で分けた状態で送るのか、ラボ側で分離してもらうのかで前処理費が変わります。

みっつめ、判定に使う閾値と、その根拠となる基準。EU RoHSの均質材料単位なのか、取引先のグリーン調達基準に書かれた独自の閾値なのか。

よっつめ、報告書の要件。日本語か英語か、試験方法の記載が必要か、不確かさの併記が必要か、検出限界値を明記してほしいか。取引先が指定した書式がある場合は、その書式を添付してください。

いつつめ、納期の希望と、特急の可否。標準納期は7営業日から15営業日です。特急を使うと加算されます。

むっつめ、税込か税抜か、送料と前処理費を含むかどうか。ここを聞かずに社内へ数字を出すと、後で差額の説明が必要になります。

分析に出すか、代行に作ってもらうかで迷っている場合は、chemSHERPA作成代行はいくらで何をしてくれるかも見てください。代行の下限は1件4,000円台で、分析とは桁が違います。両者は代替関係ではなく、順序の違う別の手段です。

未確認

掲載した料金は、2026年9月時点で各社サイトに公開されていた内容です。改定される可能性があります。また、価格を公開していない試験機関が多数あり、それらの金額は確認できていません。この記事の相場は、公開している事業者の範囲での水準です。ISO/IEC 17025認定の有無、各社が対応できる試験方法の範囲、報告書が取引先に受理されるかどうかについては、個別に確認が必要です。食環境衛生研究所の水質2項目以外の項目について、税込表記であることの明示は確認できていません。

取引先から「分析データを出せ」と言われました。必ず分析しないといけませんか

まず、取引先が求めているのが分析報告書そのものなのか、含有していないことの確認なのかを聞いてください。後者であれば、chemSHERPAや不使用証明書で足りることが多くあります。契約書や品質保証協定に分析報告書の提出が明記されている場合は必要ですが、口頭の依頼であれば、代替手段の可否を確認する余地があります。費用が20万円規模になることを伝えると、要求が変わることもあります。

いちばん安いラボに出して問題ありませんか

価格差は数千円から数万円で、それ自体は大きくありません。確認すべきは、試験方法が取引先の指定に合うか、報告書の書式が受理されるか、再試験や追加項目が別料金かの3点です。安く出した報告書が受理されず、出し直しになると総額は倍になります。最低受注金額の設定にも注意してください。単項目を1検体だけ出すと、単価ではなくミニマムチャージで請求されます。

一度分析すれば、その品番はずっと大丈夫ですか

その検体、その時点についての結果です。仕入先が材料の調達先を変えれば結果は変わります。また、SVHC候補リストは追加が続いており、2026年2月4日の第35次で253エントリーになりました。分析した時点のリストにない物質は、当然ながら調べられていません。継続的に担保するには、仕入先との間で材料変更時の通知を取り決めるほうが確実で、費用もかかりません。

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