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法規制解説

RoHS指令の制限10物質と閾値

鉛とカドミウムの閾値は同じではありません。桁が1つ違います。まずここを間違えないところから始めます。

現行のRoHSは、いわゆるRoHS2、指令2011/65/EUです。2011年7月21日に発効し、2013年1月3日から本格施行されています。当初の6物質にフタル酸エステル4種が加わり、制限対象は10物質になりました。

閾値はカドミウムだけが0.01重量%(100 ppm)で、残り9物質は0.1重量%(1,000 ppm)です。カドミウムは1桁厳しい。この差を取り違えたまま社内基準を作ると、カドミウムだけ判定が甘くなります。

10物質と、それがどこに入っているか

物質名だけの一覧は各社のPDFにいくらでもあります。実務で要るのは「自社のどの部材を疑えばいいか」なので、用途と併せた表にします。

物質閾値よく含まれる場所
鉛(Pb)0.1 wt%(1,000 ppm)はんだ、快削鋼・快削黄銅などの合金、電子部品の端子めっき、ガラス、セラミックコンデンサ、ケーブル被覆の安定剤
水銀(Hg)0.1 wt%(1,000 ppm)蛍光ランプ、バックライト、一部のスイッチ・リレー
カドミウム(Cd)0.01 wt%(100 ppm)顔料(黄・橙・赤)、樹脂の着色剤、めっき、接点材料、一部の電池
六価クロム(Cr(VI))0.1 wt%(1,000 ppm)クロメート処理(ねじ・板金・金具の防錆)、皮革、防食塗装
PBB(ポリ臭化ビフェニル)0.1 wt%(1,000 ppm)樹脂の臭素系難燃剤。現行品では使用がまれ
PBDE(ポリ臭化ジフェニルエーテル)0.1 wt%(1,000 ppm)樹脂・基板・筐体の臭素系難燃剤。再生樹脂での混入に注意
DEHP(フタル酸ジ2-エチルヘキシル)0.1 wt%(1,000 ppm)軟質塩ビの可塑剤。電線被覆、チューブ、パッキン、グリップ
BBP(フタル酸ブチルベンジル)0.1 wt%(1,000 ppm)軟質塩ビ、床材、シーリング材
DBP(フタル酸ジブチル)0.1 wt%(1,000 ppm)接着剤、塗料、インク、可塑剤
DIBP(フタル酸ジイソブチル)0.1 wt%(1,000 ppm)接着剤、インク、DBPの代替として使われた経緯あり
RoHS2の制限10物質・閾値・主な用途(指令2011/65/EU)

この表の右列が、調査の当たりをつける場所です。金属部品なら鉛と六価クロム、樹脂部品なら可塑剤と難燃剤、着色されているならカドミウム。こう分けるだけで、やみくもに全部材を分析に出す必要がなくなります。

とくに引っかかりやすいのが3つあります。ねじ・板金のクロメート処理(六価クロム)、軟質塩ビの電線被覆とグリップ(フタル酸エステル)、そして再生樹脂に混入するPBDEです。再生材は由来が追いにくいため、仕入先に「バージン材か再生材か」を先に聞くと早く進みます。

分母は製品ではなく均質材料

RoHSの閾値は、製品全体でも部品全体でもなく、均質材料(homogeneous material)の単位で判断します。機械的に分離できないところまで分けた、その材料1つが分母です。

たとえば、めっきされたねじは、母材の鋼とめっき層が別々の均質材料です。ねじ1本を溶かして平均を出すと、めっき層の六価クロムは母材で薄まって基準内に見えてしまいます。これは誤りです。

対象誤った分母正しい分母
めっきねじねじ1本全体母材の鋼/めっき層をそれぞれ別に
被覆電線電線1m全体導体/絶縁被覆/シースをそれぞれ別に
プリント基板基板1枚全体基材/銅箔/レジスト/はんだをそれぞれ別に
塗装された筐体筐体全体樹脂または金属の母材/塗膜をそれぞれ別に
ラベル付き部品部品全体部品本体/ラベル基材/粘着層/インキをそれぞれ別に
分母の取り方でよくある誤り

切り分けの具体的な考え方は均質材料の単位をどこで区切るか0.1%の分母は何か。均質材料の切り方にまとめています。分母を間違えたまま作ったデータは、取引先の受入で高い確率で差し戻されます。

分析に出すといくらかかるか

「全部材を分析すればいい」と言われることがありますが、実額を見ると現実的でないことがわかります。以下は2026年9月時点の公表価格、税抜、1検体あたりです。

項目三晃技研工業(eco分析.com)JTC(rohs-eco.com)
RoHS簡易9,000円
RoHS 4物質15,000円
RoHS 6物質18,500円20,000円
RoHS 10物質41,000円46,000円
フタル酸 3項目/6項目24,000円/30,000円
SVHC全項目195,000円(253物質)240,000円(254物質)
納期8〜10営業日7〜9営業日(特急あり)
分析費用の実額(2026年9月時点・税抜・1検体)

10物質で1検体4万円前後です。1つの製品から均質材料を20点切り出せば、それだけで80万円を超えます。だから実務では、サプライヤーからの成分情報を基本とし、分析は疑いのある部材や証拠が必要な場面に絞ります。

ミニマムチャージを設けている事業者もあります。ディファレントは8,000円からで、精密分析が8営業日、めっき膜が15営業日という納期です。相場の全体像は分析費用の相場(RoHS・SVHC・PFAS/2026年実勢)にまとめています。

中国のChina RoHSも10物質になる

中国側も物質数が揃います。推奨規格だったGB/T 26572-2011が、強制国家標準のGB 26572-2025へ格上げされました。2025年8月1日公布、2027年8月1日施行です。

制限物質は6種から10種へ。DBP・DIBP・BBP・DEHPが、それぞれ0.1%以下という基準で追加されます。試験方法はGB/T 39560シリーズ(IEC 62321シリーズ)に統一され、カテゴリIとIIによる製品分類管理、QRコード等のデジタル表示が導入されます。MIIT第32号令に基づく初の強制付属国家標準です。

施行前に生産・輸入された製品は販売を継続できます。施行後13か月以降は、すべての新製品が準拠必須になります。達成管理目録の2026年版は対象33品目に拡大されています。

観点EU RoHS(2011/65/EU)China RoHS(GB 26572-2025)
制限物質数10物質6→10物質(2027年8月1日施行)
カドミウムの閾値0.01 wt%0.1%(追加4物質はいずれも0.1%以下)
主な性格上市の禁止(適合しないと市場に出せない)表示義務と、目録品目に対する濃度制限
表示CEマーキングの枠組み含有マーク・表、QRコード等のデジタル表示を導入
適用除外Annex III / IV の除外項目リスト達成管理目録による品目管理(2026年版は33品目)
EU RoHSとChina RoHSの違い(2026年9月20日時点)

いちばんの違いは考え方です。EUは適合しなければ上市できません。China RoHSは、まず含有を表示させ、目録に載った品目に濃度制限をかけるという二段構えです。同じ10物質でも、やることは同じになりません。

未確認

GB 26572-2025 の施行日(2027年8月1日)と公布日(2025年8月1日)について、本記事では公表情報に基づいて記載していますが、一次資料での最終確認は実施していません。達成管理目録2026年版の33品目の内訳も未確認です。中国向けの出荷がある場合は、現地の認証機関または輸入者に最新版を確認してください。

遵法判断は誰がするのか

RoHSの物質と閾値を覚えても、chemSHERPAの遵法判断情報を誰が作るかという問題は残ります。成分情報は仕入先が持っていますが、適用除外を使うかどうかの判断は自社側です。ここの役割分担が曖昧なままだと、調査が往復し続けます。

考え方は遵法判断は誰がするのか、という最大の誤解に書きました。適用除外の期限が2027年に集中している件はRoHS適用除外項目の期限が2027年に集中しているを参照してください。

カドミウムだけ閾値が違うのはなぜですか

指令2011/65/EUがカドミウムを0.01重量%(100 ppm)、その他9物質を0.1重量%(1,000 ppm)と定めているためです。理由の当否より、社内の判定基準とチェックシートで数値を別に持つことが実務上は重要です。全物質を0.1%で作られたチェックシートは、カドミウムの判定を見逃します。

サプライヤーが分析データを出してくれません。自社で分析すべきですか

まず成分情報での回答を求めます。分析は10物質で1検体4万円前後かかり、均質材料の数だけ必要になるため、全数分析は現実的ではありません。それでも出てこない場合は、疑いのある部材(クロメート処理品、軟質塩ビ、再生樹脂など)に絞って分析し、結果を添えて再依頼すると話が動きます。

EUのRoHSに適合していれば、中国向けもそのまま出せますか

同じにはなりません。GB 26572-2025は2027年8月1日施行で制限物質が10種になりますが、EUが上市の可否を問うのに対し、China RoHSは含有の表示義務と目録品目への濃度制限という構成です。表示の要否とデジタル表示の対応を別に確認してください。

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