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サプライヤー対応

「データが出せない」と断られた時の代替策

情報が出てこないからといって、調査をそこで止めるわけにはいきません。止めずに進める手段は、実は3つに絞り込めます。

含有化学物質の調査依頼をサプライヤーに出したときに、「データが出せない」という回答が返ってくることは珍しくありません。理由は、そもそも成分情報を把握していない、把握しているが開示したくない、開示する体制がない、機密保持契約で原料メーカーとの間に縛りがある、など様々ですが、依頼側としてはここで調査を止めるわけにはいきません。

3つの代替策

代替策内容向いている場面
分析による代替自社または第三者ラボで対象部材を分析し、直接確認するサプライヤーの協力が得られず、確実性を優先したい場合
不使用証明書での代替「意図的に添加していない」という宣言を取得する含有量までは不要で、宣言レベルで足りる場合
設計変更による回避情報開示に協力的な別サプライヤーの部材に置き換える他の2つが使えない場合の最終手段
「データが出せない」への代替策と特徴

1つ目は、分析による代替です。サプライヤーからの申告が得られない場合、自社もしくは第三者ラボで対象部材を分析し、規制物質の含有有無を直接確認します。費用はかかりますが(RoHS分析であれば数万円程度から)、サプライヤーの協力に依存せずに結論を出せるのが利点です。ただし、分析結果はあくまで「その1ロット」の結果であり、製造ロットが変われば結果も変わりうる点には注意が必要です。

2つ目は、不使用証明書での代替です。含有量までは分からなくても、「特定の物質を意図的に添加していない」という宣言であれば応じてもらえるケースがあります。不使用証明書と非含有証明書は意味が異なり(不使用証明書は「意図的に添加していない」という宣言、非含有証明書は「検出されない」という、より強い保証を含む場合がある)、どちらを求めているのかを明確にして依頼し直す必要があります。この違いを曖昧にしたまま依頼すると、サプライヤー側が誤った様式を返してくることがあるため、依頼文の段階で用語をそろえておくことが回収率にも直結します。

3つ目は、設計変更による回避です。情報が出てこない部材そのものを、情報開示に協力的な別のサプライヤーの部材に置き換えるという選択肢もあります。ただし設計変更にはコストと時間がかかるため、他の2つの手段が使えない場合の最終手段として位置づけるのが現実的です。

優先順位の決め方

コストを抑えたいなら不使用証明書を先に打診し、それでも応じてもらえない場合に分析に進む、という順番が一般的です。ただし顧客側が分析データでの証明を明示的に求めている場合は、最初から分析を選ぶ必要があります。どちらを選ぶべきか迷う場合は、まず自社の顧客(取引先)が何を求めているかを確認し、そこから逆算して代替策を選ぶと判断がぶれません。

説明を並行して進める

いずれの手段を取るにしても、「なぜデータが必要なのか」をサプライヤーに具体的に説明しないまま代替策だけを進めると、次回以降の関係が悪化することがあります。可能であれば、代替策と並行して、取引先(自社の顧客)から実際に求められている内容をサプライヤーにそのまま伝え、協力を仰ぐという動きも並行して行うとよいでしょう。海外のサプライヤーの場合は特に、chemSHERPAという制度自体を知らないケースが多いため、まず制度説明から入る依頼文に切り替えるだけで状況が変わることもあります。

3つの代替策をすべて試しても情報が得られない場合は、取引先(顧客)に状況を正直に報告し、「情報未取得」であることを記録に残したうえで、判断を仰ぐしかありません。記録を残さずに「問題なし」と扱うことが最もリスクが高い対応です。

分析費用の目安を把握しておく

代替策として分析を選ぶ場合、あらかじめ費用の目安を知っておくと判断が早くなります。RoHS対象物質の簡易分析であれば数千円から、SVHC全項目のような広範な分析になると1検体あたり20万円前後になることもあります。品番数が多い場合、全品番を分析すると費用が膨らむため、まずは出荷量の多い品番や、情報が得られなかった部材を優先して分析するという絞り込みが現実的です。費用の全体像は分析費用の相場(RoHS・SVHC・PFAS/2026年実勢)にまとめています。

サプライヤーとの関係を維持しながら進める

代替策を進める際に見落とされがちなのが、サプライヤーとの今後の関係です。「情報が出せない」という回答をもらったあとに、間を置かず別の手段に切り替えると、サプライヤー側は「協力しなかったことを咎められた」と受け取ることがあります。代替策に切り替えるときは、「今回は分析で確認を進めますが、次回以降もし情報をご提供いただける体制が整いましたら教えてください」といった一文を添えるだけで、関係を悪化させずに済むことが多くなります。

特に、継続的に取引のあるサプライヤーの場合、一度「対応しない相手」と扱ってしまうと、次の調査依頼にも影響します。代替策はあくまで今回の調査を止めないための手段であり、サプライヤーとの関係そのものを断つ手段ではない、という位置づけを社内でも共有しておくとよいでしょう。

社内での記録の残し方

代替策を選んだ経緯は、担当者の記憶だけに頼らず、必ず文書として残しておく必要があります。台帳には、当初どの情報を求めたか、なぜ得られなかったか、どの代替策を選んだか、その結果どうなったかの4点を最低限記録します。この記録があれば、同じサプライヤーへの次回の依頼時に、前回の経緯を踏まえた依頼文に調整でき、また監査の際にも「なぜこの方法で確認したのか」を説明できます。記録を残さないまま担当者が交代すると、同じサプライヤーに同じ依頼を繰り返すことになり、サプライヤー側の負担も、自社の工数も無駄に増えます。

代替策を選んだあとの取引先への説明

代替策で得た情報は、当初求めていた「サプライヤーからの申告」とは性質が異なります。取引先(顧客)に情報を提出する際は、どの部分がサプライヤーからの申告で、どの部分が自社の分析や不使用証明書による代替なのかを区別して伝えることが重要です。この区別を曖昧にしたまま「確認済みです」とだけ回答すると、後から情報の出所を聞かれたときに説明に窮します。代替策で得た情報であることを明記したうえで、その情報がなぜ信頼できるか(分析ロットの妥当性、証明書の発行元の信頼性など)もあわせて説明できるようにしておくと、取引先からの追加質問にも対応しやすくなります。

そもそも「データが出せない」という回答自体を減らす方法として、依頼書の書き方を見直すことも有効です。目的と粒度が明確な依頼書は、サプライヤー側の「何をどこまで答えればよいか分からない」という迷いを減らし、結果として代替策に頼らずに済むケースを増やします。具体的な改善点は回収率を上げる依頼書の作り方にまとめています。

顧客への説明が先送りできない場合

取引先からの回答期限が迫っていて、3つの代替策のどれも間に合わない場合は、無理に結論を出そうとせず、進捗状況を正直に取引先へ報告することをおすすめします。「サプライヤーへの確認を進めており、◯月◯日までに分析結果が出る見込みです」のように、現在の対応状況と見込み時期を伝えるだけでも、取引先側の心証は大きく変わります。何も連絡せずに期限を過ぎてしまうことが、代替策の選択そのものよりも信頼を損なうリスクが高い対応です。

代替策の検討を最初から依頼書に織り込む

「データが出せない」という回答が来てから代替策を検討し始めると、そこから追加のやり取りが発生し、時間がかかります。初回の依頼書の段階で、「もしデータの提供が難しい場合は、不使用証明書での対応も可能です」といった代替の選択肢をあらかじめ提示しておくと、サプライヤー側も最初から現実的な回答を選びやすくなります。代替策を後出しにするのではなく、依頼の設計段階から組み込んでおくことが、全体の対応スピードを上げる工夫になります。

分析と不使用証明書、どちらを優先すべきですか

コストを抑えたいなら不使用証明書を先に打診し、それでも応じてもらえない場合に分析に進む、という順番が一般的です。ただし顧客側が分析データでの証明を明示的に求めている場合は、最初から分析を選ぶ必要があります。

3つの代替策をすべて試しても情報が得られない場合はどうすればよいですか

取引先(顧客)に状況を正直に報告し、「情報未取得」であることを記録に残したうえで、判断を仰ぐしかありません。記録を残さずに「問題なし」と扱うことが最もリスクが高い対応です。

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