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サプライヤー対応

上流が嫌がる理由を理解する

統一フォーマットができて負担が減ったように見えるのは、依頼する側からだけの景色です。上流には別の負担が積み重なっています。

含有化学物質の調査依頼が思うように返ってこない背景には、依頼を受け取るサプライヤー(上流)側の事情があります。ある業界の実際の声として、「フォーマットが増える不利益の方が多いから御免こうむる」という反応が確認されています。これは、顧客ごとに異なる調査票やフォーマットへの対応が積み重なり、サプライヤー側の負担だけが増えているという構造的な問題を表しています。

依頼側と上流側で見えている景色が違う

依頼する側からすると、chemSHERPAという統一フォーマットができたことで負担が減ったように見えますが、サプライヤー側では顧客ごとに独自のExcelシートや自由記述の調査票が並行して届き続けている、というのが実態に近い状況です。

立場見えている景色
依頼する側(顧客)chemSHERPAという統一フォーマットができ、負担が減ったように見える
受け取る側(サプライヤー)顧客ごとに独自のExcelシートや自由記述の調査票が並行して届き続けている
依頼側と上流側の非対称性

1社のサプライヤーが10社の顧客と取引していれば、統一フォーマットのchemSHERPAデータに加えて、9社分の独自調査票への対応が別途発生している可能性があります。この非対称性を理解しないまま督促だけを重ねても、関係は改善しません。

依頼側にできる対策

対策としては、可能な範囲で依頼側の要求を標準化することが挙げられます。自社が発行する調査票をchemSHERPAの標準フォーマットに寄せる、独自の追加質問を最小限にする、といった工夫は、サプライヤー側の負担を減らし、結果として回収率の改善につながります。完全には解決できませんが、少なくとも自社からの負担は減らせます。業界団体や取引先の集まりで標準化を働きかけるという中長期的な手段もあります。

また、サプライヤーに対して「なぜこの情報が必要なのか」を一度きちんと説明する機会(説明資料や簡単な説明会)を設けることも効果があります。制度の全体像を理解してもらえれば、単発の依頼への対応も変わってきます。特に中小のサプライヤーでは、担当者が化学物質管理の専任ではなく他業務との兼任であることが多いため、専門用語を避けた平易な説明資料を用意するだけでも協力度合いが変わります。

海外サプライヤーはさらに事情が異なる

海外のサプライヤーの場合はさらに事情が異なり、そもそもchemSHERPAという制度自体を知らないケースが多くなっています。この場合は「対応してもらえない」のではなく「何を求められているか分からない」状態であることが多く、制度の背景から説明する依頼文に切り替える必要があります。依頼文の冒頭に、chemSHERPAが何のための制度で、なぜ自社が情報を求めているのかを2〜3行で添えるだけでも、返信率が変わることがあります。

実務上は、目的が不明な依頼のほうが「何に使われるか分からない」という警戒を招きやすく、目的と用途を明示したほうが協力を得やすいという結果になります。督促の強さを上げるよりも、まず説明の丁寧さを上げるほうが、上流の協力を引き出す近道になることが多いといえます。

説明資料に入れるべき内容

サプライヤー向けの説明資料を作る場合、専門用語をそのまま並べるのではなく、「なぜ聞かれているのか」「答えるとどう楽になるのか」の2点を中心に構成すると伝わりやすくなります。具体的には、制度の全体像(chemSHERPAが何のための仕組みか)、自社が求める理由(欧州向け出荷がある、顧客から要求されている、など)、そして回答することで次回以降の依頼が簡略化されるという見通しの3つを、1〜2ページに収めます。法令の条文をそのまま引用するよりも、「今回答えていただければ、来年以降は差分だけの確認で済みます」といった、相手にとっての具体的なメリットを書いたほうが協力を得やすくなります。

標準化を進める具体的な手順

自社の調査票を標準化する作業は、いきなり全社的に取り組むと止まってしまいがちです。まずは影響の大きい主要サプライヤー数社を対象に、chemSHERPAの標準フォーマットへの移行を試し、独自の追加質問がどうしても必要な項目だけを最小限残す、という段階的な進め方が現実的です。試行した結果、回収率や回答の質に改善が見られれば、その実績を社内の他部門に共有し、全社的な標準化の合意形成に使うことができます。

いきなり完璧な標準化を目指すのではなく、まず一部のサプライヤーとの間で運用を変えてみて、その効果を確かめながら広げていく進め方のほうが、現実的に定着しやすいといえます。

中小サプライヤーへの配慮

中小規模のサプライヤーでは、化学物質管理の専任者がいないことが珍しくありません。営業担当や製造担当が本来の業務と兼任で対応しているケースが多く、専門用語だらけの依頼書を送ると、そもそも読み解くこと自体に時間がかかってしまいます。この場合、依頼書に用語集へのリンクを添える、あるいは1枚の説明資料を同封するといった配慮が、結果的に回答までの時間を短縮します。相手の体制を推測せずに、依頼書の作りやすさを一律に高めておくことが、幅広いサプライヤー層からの協力を得るための現実的な対策になります。

上流の協力度合いを長期的に測る

サプライヤーごとの協力度合いは、一度の依頼結果だけで判断せず、複数回の依頼を通じて傾向を見ていくと、対応の優先順位をつけやすくなります。毎回スムーズに回答が来るサプライヤーと、毎回督促が必要になるサプライヤーを台帳上で区別しておけば、後者に対しては依頼のタイミングを早める、説明資料を厚くするといった個別の対応を検討できます。すべてのサプライヤーに同じ強度で働きかけるのではなく、傾向に応じて力の入れどころを変えることが、限られた工数を有効に使う考え方になります。

上流の事情を理解したうえで依頼書そのものを改善する具体的な方法は、回収率を上げる依頼書の作り方で扱っています。目的・粒度・期限・窓口を明確にした依頼書は、ここで説明した非対称性を緩和する実務上の手段のひとつです。

社内の依頼担当者にも同じ視点を共有する

上流が嫌がる理由を理解するのは、サプライヤー対応窓口の担当者だけでは不十分です。調達部門や設計部門など、社内の別の担当者が個別にサプライヤーへ問い合わせをしている場合、chemSHERPAの窓口とは別ルートで独自の質問が飛んでしまい、結果的にサプライヤー側の負担を増やしていることがあります。社内向けにも「サプライヤーへの問い合わせは可能な限りこの窓口経由で」という運用ルールを周知しておくと、サプライヤー側から見た依頼の重複を防げます。

感謝を伝えることも回収率に効く

協力してくれたサプライヤーに対して、回答を受け取った際に簡単な御礼を伝えることも、次回以降の協力度合いに影響します。「ご対応ありがとうございました、助かりました」という一言を添えるだけでも、依頼と督促だけの関係から一歩進んだやり取りになります。特に継続的に取引のあるサプライヤーとは、こうした小さなやり取りの積み重ねが、長期的な回収率の底上げにつながります。

業界単位での取り組みも視野に入れる

自社1社だけで標準化を進めるのには限界があります。同業他社と共同でサプライヤーへの依頼フォーマットをchemSHERPAに揃える働きかけを行う、業界団体の勉強会でこの課題を共有するといった、業界単位の取り組みも中長期的には有効です。自社の標準化が先行事例として実績を積めば、同業他社への働きかけの説得材料にもなり、結果としてサプライヤー側の負担軽減がより広い範囲で進むことにつながります。

サプライヤーに調査の目的を説明すると、かえって警戒されませんか

実務上は逆のケースが多くなっています。目的が不明な依頼のほうが「何に使われるか分からない」という警戒を招きやすく、目的と用途を明示したほうが協力を得やすくなります。

顧客ごとに違うフォーマットを送られる問題を、自社の力で解決できますか

完全には解決できませんが、自社が発行する調査票をできる限りchemSHERPAの標準フォーマットに寄せることで、少なくとも自社からの負担は減らせます。業界団体や取引先の集まりで標準化を働きかけるという中長期的な手段もあります。

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